経以伝法-仏典と伝承

経以伝法-仏典と伝承

Transmitting the Dharma - Buddhist Sutras
201D 展示ホール

仏典の編纂は仏陀が涅槃に入った後から始まりました。仏陀の教法を護り伝え、後世の衆生が仏の教えに浴することができるようにと、弟子たちが経典にまとめたのです。経典には「経典が所在するところに即ち仏あり」とあり、経典は仏弟子が修行のより処とする存在です。

仏典が中国に伝えられた当初、一部が散逸したり、内容が正しく伝えられなかったため、仏弟子は仏の教えを求めて西域へ向かいますが、その道のりは険しく苦しいものでした。生涯のすべてを経典の翻訳という大事業に費やし、訳された経典や伝抄、または木版などは代々途絶えることなく今日に受け継がれています。

取経、訳経、写経、刻経は仏弟子が法を伝え、法を護ることの行願です。彼らが法のために自らを顧みず、自身の命も惜しまなかったのは、ほかならず「正法久住」を実践し、仏法を護り伝えるためでした。

『妙法蓮花経』写本残巻

618-907 C.E.
黄紙墨書
25 cm
201D 経以伝法-仏教典籍と伝承
唐代の写本『法華経』の「妙音菩薩品第二十四」。一行十七字、二十八行のみが残っている。南北朝から隋・唐時代にかけ、写経の書法は歴代儒学者の努力や仏教の発展と相まって、丁寧で見やすさを追求したものから優雅な書法芸術へと発展していった。この法華経の残巻は唐代の写経書法の逸品であり、黄紙に書された筆跡は力強く優雅、丁寧かつ謹厳なことから熟達者の手に成るものと思われる。
僧法暉墨書『大乗入楞伽経』

1112 C.E.
紙本墨書
28.5 cm
201D 経以伝法-仏教典籍と伝承
南北朝から唐代にかけ、写経体と当時の書風が融合したことにより、仏典の書写は風格に広がりを見せた。写経は観る者の心を落ち着かせ、仏法により近づけることを目的としており、決して無造作に行ってよいものではない。宋代は既に木版印刷が成熟していたため、写経は唐代のように盛んではなかったが、本巻は宋代の僧侶、法暉により書写されたものである。唐代の結体を残しつつ、筆遣いは力強く豊かであり、引き締まった字体や密な字間などは宋代の書風を体現している。巻首に明代呉中の周天球公瑕の収蔵印がある。
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