両岸博物館交流座談会リポート

両岸博物館交流座談会リポート

文 / 中台世界博物館

両岸博物館交流座談会

中台禅寺は、開山方丈――惟覚安公大和尚が率いる下で、仏法の「学術化、教育化、芸術化、科学化、生活化」を進め、開山から二十五年にわたり豊かな成果を収めて参りました。惟覚大和尚の芸術をもって世を感化するという悲願を堅持するとともに、中台両岸の博物館交流を促進するため、当寺は中台世界博物館が落成した8月13日の午後二時より、中台世界博物館講演ホールにて「両岸博物館交流座談会」を開催し、四百人近くが座談会に参加しました。座談会では、両岸の文物芸術分野の学識専門家が「博物館教育の推進」について意見を交わし、両岸の博物館教育の理念と経験における交流に啓発的な意義を付与しました。

中台禅寺住職の見灯大和尚が座談会開幕の挨拶を行った。


座談会は中台禅寺住職――見灯大和尚を迎える大きな拍手の中で幕を開け、開幕の挨拶の中で大和尚は次のように述べられました。二十一世紀は生涯学習の時代です。博物館は人々が生涯教育と文化に触れることのできる重要な場であり、全民を教育対象とし、多様な教育施設を備えた、教育を普及させるには絶好の施設なのです。今の博物館には見過ごすことのできない重要な課題があります。それは博物館のより優れたサービスと教育活動を支える力となってもらうために、如何にして社会の人的資源を効果的に活用し、芸術や文化を愛し、博物館のボランティアを志す人々を育てるべきかというものです。博物館のボランティアの役割と任務は、人類の文化遺産を社会と結びつける架け橋のようなものです。両岸の博物館界の交流を通じ、各博物館がどのような教育プログラムやボランティア教育を行い、より多くの観覧者が受け入れ、訪れる価値のある博物館を築いているのかを学び合い、博物館の使命遂行と博物館教育の推進において重要な力を得ていただきたいと思います。大和尚の祝福の下で両岸博物館交流座談会が始まりました。

挨拶をする中台禅寺住職―見灯大和尚

座談会では、中台世界博物館館長の見諶法師、中国国家文物局博物館・社会文物司の張建新副司長、山西博物院の石金鳴院長、世界宗教博物館の陳国寧館長、上海博物館の楊志剛館長、国立台湾台北芸術大学の林保堯名誉教授、西安碑林博物館の裴建平館長、中台世界博物館副館長兼木彫分館館長の見排法師、南京博物院の嵇亜林副院長、国立台南芸術大学文博学部の劉婉珍学部長、河南博物院の劉玉珍副院長、浙江博物館の雍泰鶴副館長、中台世界博物館副館長の見迅法師、山東博物館の王之厚副館長などがゲストとして意見を発表されました。


見諶法師はまず両岸の博物館長及び学識専門家を紹介し、座談会の意義について次のように紹介しました。博物館の教育機能は今後の各種イベントの推進において重要な意義と働きがあります。展示と教育は博物館と観覧者の間の重要な架け橋であり、観覧者が学習の主体となります。この架け橋は人による解説と文物の展観、及び各種学習支援を通じ、観覧者が博物館の展示品と文化に対する理解を深めることによって築かれます。この度の座談会では各博物館が成功事例を紹介し、今後の博物館運営者の参考に供していただきます。

司会者:中台世界博物館館長 見諶法師


張建新副司長は挨拶の中で次のように述べました。中台両岸の博物館交流は両岸博物館の専門化とサービス、特にボランティア育成と社会教育の推進において大きな役割を果たしています。本日は両岸の博物館の代表の方々と交流できることを大変嬉しく思います。必ずや博物館教育、博物館の運営を促進させることでしょう。この度の交流が両岸の博物館に更なる進歩をもたらすことを願っています。

中国国家文物局博物館.社会文物司 張建新副司長


石金鳴院長のテーマは「晋魂」――山西博物院の語り尽くせない物語。堯舜から春秋、戦国時代以来の山西地域における歴史と文化、その中で中華文明の発展に影響を及ぼした重大な歴史的事件や独特な特色を備えた歴史文化遺産が、現在の山西博物院の主力展覧「晋魂」を作り上げ、それはまた山西博物院の文化的責任、創意の基礎、そしてストーリーの源ともなっています。

山西博物院 石金鳴院長


陳国寧館長は「博物館教育再考」をテーマとし、博物館の教育は多元的であり、単に教育理論について研究する伝統的な方法だけでなく、社会人類学、文化研究、観覧者研究及びブランドマーケティングなど、博物館の教育とPR活動を多面的に発展させるべきであると述べました。

世界宗教博物館 陳国寧館長


楊志剛館長は上海博物館が開催する「芸匠古今」の一連のイベントを例に取り上げ、博物館教育現場の実践案について論じました。同博物館では館蔵の歴代工芸美術品をベースに、ガイド、講座、テーマ文化イベント、夏季冬季休暇イベント、読み物などをはじめ、青少年観覧者向けの体験カリキュラムを組むなどして、人々の審美的境地を向上させ、文物が内包する中華文化への理解を高め、その文化創造の精神を掻き立て、社会の調和を推進しているとし、これらが公共教育の主な内容であるとしました。

上海博物館 楊志剛館長


林保堯教授は「考察・交流・実践」をテーマとした発言の中で、中台世界博物館は人類の「仏教芸術遺産」を主軸とした専門性の高い博物館であり、「仏教造像文物」などをテーマとした国内初の博物館でもあるとしました。展示スペースや空間の広さ、仏教造像文物の豊富な収蔵数は国内外でも稀に見る規模であるとし、相対的にその責任は重く、立ち向かうべき挑戦も厳しいと主張。このため考察と交流を通して学び、更に実践を通して館にとって最適な運営の知識と行動力を構築してくべきとしました。この仏教芸術の専門博物館が台湾で最も美しい風景となるよう期待したいと締めくくりました。

国立台湾台北芸術大学 林保堯名誉教授


裴建平館長は「西安碑林博物館の特色ある教育イベント例」を紹介し、館蔵資源を運用した教育のブランドの確立、孔子廟の遺構や遺物による儒学文化の伝播、自身の優位性を利用した新たな教育案などについて触れました。例えば碑林文化教室、漢字の謎の解明、伝統文化体験、古代文献の吟誦、歴史寸劇、学校向け教材の開発、書法夏期セミナーなど特色ある教育活動を通じて人々に博物館文化を伝え、人々に愛される博物館を目指しており、同時に関連教育活動の開催により、人々が身近に感じられる博物館づくりに努めていると述べました。

西安碑林博物館 裴建平館長


見排法師は博物館ボランティアの個体を出発点に「中台世界博物館ボランティアの永続的成長の可能性」について研究し、「参加動機」「仕事への投入」「組織コミットメント」の三者の相互関係について理解しようとしました。その結果、ボランティアを募集するときは「生涯学習」を強調することで仕事への投入を促し、同時に団体の信念を強められるほか、新入ボランティアを直接サービス体系に組み入れることで、組織的価値の実践を通じて最終的には組織コミットメントを深化させることができるとしました。結論としてボランティアは「仕事への投入」「組織コミットメント」「生涯学習」の良好な循環において成長させるべきであるとしました。

中台世界博物館副館長兼木彫分館館長 見排法師


嵇亜林副院長は「博物館における社会教育の時代的使命」をテーマに、南京博物館では社会教育を歴史館・芸術館の展覧や展覧文物と結合させていると紹介。観覧者の展覧への参加度合いや体験について観察し、専門性、知性、面白さ、鑑賞性などを有機的に結びつけ、異なる観覧者層に合わせて豊富な教育活動を企画し、これにより博物館と観覧者の間に密接な関係が生まれていると述べました。

南京博物院 嵇亜林副院長


劉婉珍教授は、博物館は閉ざされた知識の殿堂から、人々が自由に動き回るフレンドリーな場へと変わるべきと指摘。また、博物館はボランティア訓練と教育実務において生命教育を核心価値とした基準の移行――「観覧者への解説」の二元的な対応から「相互対談」の一元的な思惟へ移行すべきとしました。同時に博物館による社会奉仕と人を以て本とする核心価値を見極めるべきと述べました。

国立台南芸術大学文博学部 劉婉珍学部長


劉玉珍副院長は近年の博物館教育の理念が「教育」から「学習」へ移行しているとし、子ども達への知識伝授から、より多様で異なるタイプの観覧者にメリットを感じてもらうことにシフトしているとしました。また、博物館教育は展覧、データ共用、チーム編成を通じて博物館の学習資源を人々に紹介する一方で、学校や地域でPR活動を行う出動型サービスにも取り組み、博物館の壁を取り払い、より幅広く人々と触れることで「内外兼修」の学習モデルが確立されると述べました。このほか、博物館ボランティアとそれが生み出す社会資源を重視、活用すべきとし、博物館教育における機能化の向上と社会化の促進を図ることが大切だと述べました。

河南博物院 劉玉珍副院長


雍泰鶴副館長は「人を以て本とする社会教育の展開」について述べ、浙江博物館の教育活動が絶えず新しい教育形式を取っていると紹介しました。教育活動は博物館の資源に依存しており、伝統文化をテーマに群衆別の教育活動を企画し、シリーズ化、ブランド化を図りながら異なる年齢層のニーズを満たしているとしました。また、展覧に合わせたインタラクティブなイベントの開催、教育活動のカリキュラム化、非物質文化の展示プラットフォーム、シリーズ講座、移動博物館などを通じ、サービスの質を向上させ、伝播ルートを開拓し、より多くの人々が博物館を訪れるよう図るべきと述べました。

浙江博物館 雍泰鶴副館長


見迅法師は中台世界博物館・木彫分館の前身である中台山博物館(運営期間2009年10月3日~2015年10月19日)における博物館実務の経験から「博物館教育現場の実践案」について述べ、教育推進活動の実践案の中から特別展教育活動、辰年のシリーズイベント、学校との協力プログラムを紹介。展示という方便を通じ、人々に仏教文化と中華文化が相互補完する精神性と価値や意義について理解してもらうことが重要だとし、中台世界博物館の館蔵文物はどれも人心を浄化し、心を慰める宝ばかりであるとしました。

中台世界博物館副館長 見迅法師


王之厚副館長は「山東博物館の業務紹介」と題し、博物館教育現場の実践例を紹介しました。同館の性質、機能に基づいて館蔵文物を展示し、山東地域の人文の歴史や自然環境を展示に反映させるほか、最新の学術的発見、研究の進展、美術創作などを併せて紹介し、異なる観覧者層に合ったテーマ展を開催。そしてそれらを基礎とした「孔子学堂」「歴史教室」「自然教室」の三つの教育ブランドを確立しているとしました。

山東博物館 王之厚副館長


司会者を務めた中台世界博物館館長の見諶法師は、総括の中で次のように述べました。

交流と相互訪問は博物館教育を推進するための重要な手段です。本日の座談会では博物館教育推進の成功事例や人を以て本と成す概念など、どれも博物館教育の推進において手本や参考となるでしょう。中台世界博物館の落成という特別な因縁により、両岸の博物館館長、学者、教授が一堂に会し、経験を分かち合い、交流を行ってきましたが、これにより博物館と博物館、博物館と学術、博物館と学校の間の交流は、ますます活発で多様なものとなっていくでしょう。中台世界博物館は人と宗教、文化歴史、知識が対話できるプラットフォームとして、将来も引き続きPR活動を進めて参ります。この度は遠路も辞さず参加された両岸の博物館館長、学者、教授の熱い思いに感謝申し上げます。中台世界博物館は将来も引き続き両岸の博物館と交流し、共に真善美の人間浄土を築けるよう願っています。

座談会は熱烈な拍手の中、円満の内に幕となりました。今回の座談会では多くの専門家の貴重な経験を聞くことができ、両岸の博物館界の交流もまた新たな一里塚へと向かい始めています。博物館は教育と学習の方便を通じ、観覧者の精神的生活を豊かなものにし、本来具える善良で光明の心を啓発し、自性荘厳の浄土を築く――これぞ仏法芸術化の具体的な実践なのです。

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